• 小宮沢 奈代

ライフもワークも、長続きする「幸せ」を目指す(株式会社スぺサン 植松健佑さん 前編) 


CHO(Chief Happiness Officer)という肩書を聞いたことはありますか?


これは企業において社員の幸福度を上げるマネジメントをする専門のポジションのことで、海外の先進企業で導入され始めたことから日本国内でも広まってきています。

株式会社スペサンは、CHOとしてクライアント企業と一緒に施策の立案や運用をしながら、働く人たちの幸福度を向上させ企業の成長を目指す「社外CHO事業」を行なっています。


代表取締役社長の植松健佑さんは、これまでの日本の「結婚式」の概念を覆すユニークなオリジナルウェディング事業「HAKU」や、様々なライフイベントのサプライズプロデュースを手掛ける事業「Surprise Holic」から同社をスタートさせました。


「結婚式」という幸せなライフイベントを創る事業から幅を広げ、働く人の幸せにも貢献することになった経緯や、企業も働く人もどちらも幸せになるために大切なことは何かを伺いました。



「結婚式そのもの」ではなく「結婚する意味」という本質を考える

―「結婚式をしよう」と思うと、まず最初に会場探しから始めるというイメージがあるのですが、「HAKU」ではまずカップルに対して「夫婦にとって大切な価値観は何か?」をヒアリングすることから始めるそうですね。


日本では、結婚式について考えるならまずは式場探しからというイメージがありますが、本当に大切なことは、どこで結婚式をするかよりも、なぜ結婚式をするかを考えることだと思っています。


昔は家で、家族だけで集まって食事をするという結婚式が当たり前にありましたが、だんだんと欧米型の結婚式の様子がメディアで取り上げられることによって、今のような結婚式観が広まったという歴史があります。つまり、式場から探す結婚式の考え方というのは、流行を踏まえてメディアが形作ってきたものであり、一つのビジネスモデルなんです。極端なことを言えば、結婚式の中身よりも、流行に沿った綺麗な箱(式場)を建てて、あとはどれだけ空き枠を作らずに組数を入れられるか、ということが大事になってしまう構造があると思っています。


この、式場から選ぶ価値観に縛られてしまうと、「そもそもなんで結婚するんだっけ?」「結婚式ってなんで必要なんだっけ?」という最も重要なことを新郎新婦さんたちに考えてもらえる機会がなくなってしまうので、そこに違和感がありました。会場の美しさや豪華さよりも、自分たちが結婚式で大切にしたいことが実現できるからという理由で結婚式場は選ばれるべきだろうと。


僕らの場合は自社の式場を持っているわけではないので、会場の魅力を訴求するのではなく、プロデューサー(一般的な式場で言うプランナー)が最初に3時間ぐらいかけてヒアリングをして、これを基に結婚式のプランをご提案させていただいています。「出会ったきっかけ」から「どうやって好きになって、どのタイミングで告白・プロポーズをしたのか」「結婚するにあたってどんなことを大事にしていきたいのか」「どんな家族を作りたいか」といったことをひとしきり聞いていって、その中からおふたりの人生における大切なことを理解し、「夫婦の価値観」と「結婚式のコンセプト」として、それを言葉にして提案していきます。お客様の中には、自分の人生の物語が詰まった提案書を受け取って、涙される方もいらっしゃいます。


「自分たちにとって大切なことをちゃんとわかってくれた。そういう人たちと一緒に結婚式を作ることができる。」ということに価値を感じてもらいたいと思っています。だからチャペルが素敵とか、お庭がきれいとか、そういうハードウェアの部分で決めてもらうのではなく、人や想いといったソフトの部分、だけど強い納得感を持って選んでもらうということを大事にしています。これが、「HAKU」の特徴ですね。



全員が同じ時間に同じ料理を食べることでオンラインでも「一体感」を実現

―最近は「オンラインウェディング」も始められたそうですね。他社でも同様のサービスはあるようですが、「HAKU」ならではのこだわりは何ですか?

何と比較するかでも観点が違ってくるのですが、まず一つは「リアルな場でやっている結婚式をただライブ配信するのではない」ということです。


「オフラインでできないから代わりにオンラインでやる」とか、「オフラインでやるのを見てもらうためにオンラインを使う」のではなく、「オンラインという会場で、そこにフィットした結婚式をちゃんとプロデュースしよう」と捉えてやっています。


あと特徴としてあげるとすれば、オンラインでのウェディングではあるものの「オフラインでの演出」も大事にしている、ということです。


参加している全員が同じ料理を食べられるように、冷凍の料理をゲストのご自宅に事前配送したり、「ウェディングキット」という、結婚式に参加するのに必要なアイテムやツールを入れた箱をお送りしたりして、新郎新婦からゲストへのおもてなしを届けています。


オンラインでやるということを、決してネガティブに捉えず、リアルな場で結婚式をした時のような感動を味わってもらえるように、新しいスタイルをゼロから考えています。


わざわざ料理まで送るのは、やっぱり、同じものを食べて「おいしいね」って感想を言い合えるっていうことだけでも、同じ瞬間を共有している感覚になれるというか、繋がっている感覚を味わってもらえるからです。直近は、ARを使った演出ができるサービスを新たにリリースしました。このような、当日がより良いものになる演出やオプション的なアイテムは、パートナーさんにも協力してもらってこれからも拡充していきたいですね。





日常の中に自然にWell-beingな状態が作られる風土を生み出すことが大事

―「社外CHO」とはどういう存在ですか?


ウェディング事業と並行して、結婚式のプロデュースを通じて得た「場をつくる」ノウハウを活かして、企業の社内イベントを結構お手伝いしていたんです。ただ、イベントの時だけのお手伝いでは、基本的に瞬間最大風速的なことしかできないんですよね。その場は確かに盛り上がるし、「今年の全社総会よかったねー」という話にはなるものの、翌日にはいつもの日常業務が待ってるという、このギャップがどうしてもあるんじゃないかと。感動や幸せが生まれる“瞬間”は作れても、職場で過ごす“日常”が幸せになるところまではなかなか踏み込めないなと思っていました。そこをもっと、日々の社内のコミュニケーションからWell-beingを感じられるようになるお手伝いができないかと思うようになって。その方が、働く人の幸福度を高められそうだなと。それを企業に対して提供するのに何と呼ぼうかと考えて、たどり着いたのが「社外CHO」という言葉です。


社員を幸せにしたいと思っても、Well-beingのことだけをミッションにできる人がいる、というのは滅多にないことですよね。人事とか総務の方が、通常の自分のミッションとは別に、エンゲージメントを高めることを考えていたりするといったケースが結構あると思います。社内イベントをやる時も、誰かがそれをメインで担当するのではなく、複数のメンバーが副次的なミッションとして持っていることが多いと思うので、そこを僕らが、社外なんですけど社内と一つのチームになって動けると、足りていないリソースを補いつつ、スピード感を持って形にしていけるというメリットがあります。

僕らはイベント会社ともコンサルとも違って、クライアント社内のチームと一つになって企画から実行までをトータルでお手伝いしています。それが「社外CHO」という役割だと考えています。


―社内でも何かWell-beingな取り組みをされていますか?


最近会社のビジョン、ミッションなどを改めて決め直したんですね。そこでそのビジョン、ミッションについてメンバーみんなで理解を深めるワークを、弊社のCHOが主導して、週一回やっています。


例えば、会社の“バリュー”と呼んでいる行動指針みたいなものが5つあるんですが、そのうちの一つについて「どんな行動がそのバリューを体現しているか」といったことをみんなでディスカッションするんですね。実際にあり得そうなシチュエーションを設定して、ケーススタディ的に「こんな時このバリューに基づいた行動って例えば何だろうね」と、それぞれが自分の意見を話す、ということをやっています。


ビジョンとかバリューを浸透させる時は、会社が決めたものを一方的にインストールしていくというよりも、メンバー個々人の価値観や感性も大切にしながら、会社として外せない軸との接点を見出していくことが大切だと思っています。


正解がない中で議論を繰り返していくことが、文化を育んだり理念を浸透させていくということだと思いますし、そうやってみんなで大切な価値観を共有できていると、よりWell-beingな状態に近づくかなと思います。


あとは、独自のオフィスコンビニみたいなことを社内でやっています。誰かがおいしいパンなどを買ってきて、そこに数十円上乗せして社内で販売するんです。コーヒーが好きな人はおすすめの豆を買ってきたり、体に良いお菓子を買ってくる人がいたりなど、自由にできるんですが、価格に上乗せされた利益分は「Happy貯金」みたいな感じで貯まっていく仕組みになっています。その貯まったお金で、たとえば夏にみんなでスイカを買ってきて食べようとか、オフィスに新しい備品を導入しようとか、そういうことの予算に充てています。個人が欲しいものを買うことで、みんなで楽しめるものに繋がる貯金をしているという感じですね。企画を考えるのが好きで得意な人が多いので、月末とか四半期末の納会なんかも、みんなの発想で企画してもらっていたりします。最近だと、インターン生の卒業式というのを行ったのですが、それもメンバーが企画からデザイン、運営まで全て進め、素晴らしい時間になりました。


せっかく「スぺサン(スペシャルサンクス)」という社名なので「ありがとう因子」につながる話を(笑)。


社員同士でありがとうを伝える「サンクスカード」を取り入れている企業さんは多いと思うんですが、僕らは、毎週その一週間で一番感謝した人にメッセージを書いてカードを手渡すという方法でやっています。最近、それがアップデートされて、オリジナルデザインのカードが完成したのですが、会社の5つのバリューのチェックボックスが追加されました。感謝の言葉を伝える時に「こういうバリューを発揮してこういうことをしてくれました、ありがとう。」という感じで、エピソードに関連するバリューを合わせて伝えることで、全員が大切にしたい共通の価値観を日々意識できるようにしています。スペシャルサンクスという名に恥じないよう、この「ありがとう」を送り合う文化は、これからも大切にしていきたいですね。


僕らの仕事の中では「幸せ」っていうキーワードがよく出てきます。「幸せ」って何だろう?という哲学みたいな話を社内でしたりしていて、そういう機会が多いこと自体もWell-beingを高めているのかなと思っています。「幸せ」の定義は人それぞれで「大きな報酬」とか「社会的な地位」を重視する人もいるかもしれませんが、僕らにとっては、「幸せ」は他者とのつながりの中に生まれる部分が大きいのではと考えています。だから、人の想いや心に触れてそれを形にしていくことや、人から人へ想いが届く瞬間のお手伝いに仕事で携われることは、僕ら自身も幸せにしてくれます。これからも、「大切な人を想う幸せが連鎖する世界」を創っていくために、社内での取り組みはもちろん、社外への発信も増やしていきたいですね。


後編につづく



<植松健佑>

2015年に株式会社スペサンを創業。以来、サプライズやオリジナルウェディングのプロデュース事業を通じて、“人を幸せにする心震える瞬間”をつくり続ける。現在は、法人向けに「社外CHO(Chief Happiness Officer)」事業を展開し、社員の幸福度を高め企業の成長を支援するためのコンサルティングを行っている。学生時代、ストリートダンスの舞台を通じて得た感動が起業の原体験。趣味はサウナとクラフトビール。



【株式会社スぺサン】

所在地:東京都文京区

設立:2015年4月10日

事業内容:サプライズプロデュース事業、オリジナルウェディング事業、各種イベント / パーティーなどの総合演出

https://sp-thanks.com/

サプライズプロデュース事業「Surprise Holic」https://surprise-holic.com/

社外CHO事業「Special Thanks」 https://sp-thanks.com/cho/

オリジナルウェディング事業「HAKU」 https://haku-cb.com/



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