• 小宮沢 奈代

ライフもワークも、長続きする「幸せ」を目指す(株式会社スぺサン 植松健佑さん 後編) 

前編はこちらから


 

理想の状態は「らしさ」の中にある

―Well-beingな会社の共通点とは何だと思いますか?


一概には言えないところはありますが、やっぱり「多様なことを認めている」というのはWell-being度が高い会社のポイントではないでしょうか。ただ、「多様」であるけれど何も軸がないわけじゃなくて、「みんなが大事にしてる価値観というものが真ん中にあって、それに紐づいている前提においての多様性をものすごく認めている」という感じです。その両面をちゃんと両立させているか、そういう取り組みがちゃんと形になっていたり、社員の人たちが「自分たちの会社ってそうだよね」って意識している状態ですね。 「理念」「ビジョン」「ミッション」とか言い方はいろいろあると思うんですが、「自分たちの会社が大切にしている価値観」というものが何かしらみんなの中にちゃんと共通言語としてあって、かといって具体的な行動とか考え方まで制限されるわけではなくて、その価値観を「自分なりにどう解釈してます、だからこう行動します」というその選択の幅が認められているような状態があるのが、Well-beingな会社ではないかと感じています。 僕らもお客様のお手伝いをさせていただく時に、僕らが持っている正解みたいなものを伝えにいくという感じではないんですよね。その会社なりにWell-beingな状態ってきっとあると思っていて、この通りにやれば幸せになれますみたいなノウハウがあるわけではなく、考え方の視点とか切り口はいろいろ持ってはいるものの、絶対にこの順番でこの通りにやればいいっていうのをインストールするわけではないんです。その会社にとってのよい状態とか、「らしさ」がちゃんと出てる状態ってどういうことなのかをちゃんと理解するところから始めていかないとやっぱりハマらないと思ってるんです。お互いに感謝を表明しあったり思いやりのある優しい雰囲気がフィットする会社もあれば、切磋琢磨して高め合う厳しさの中にちゃんと信頼関係があるというのがフィットする会社もあったりするじゃないですか。 その会社にとっての「らしさ」、つまり「内輪ノリ」が結局のところ最強だと思ってるんです。その内輪感の増幅というか濃縮というか、その部分にちゃんとアプローチできると、中にいる人たちが違和感なく受け止められる施策になると思います。今僕らが学んでいるWell-being的な知識のところと、「その会社らしさ」というここの架け橋をちゃんと作ってあげること。「らしさ」を言語化して、ちゃんと認識したうえで施策を提案するという、ここが結構重要なんじゃないかと思っていますね。


―「理想の状態」をイメージした時に、今の状態から変わらなくちゃとか、何か違うものを目指そうとしがちになると思うのですが。

変革が必要なタイミングというのがあると思うんです。この状態が理想だと決めて、そこに向かおうとすることが重要な時というのもきっとあると思うんですが、それをするにしても変えるべきところと変えたくないところはその組織の中にはきっとあるだろうし、これまでの歴史の中で培われてきた暗黙知みたいなものの中に、その会社の強さとか魅力もきっとあるはずだと思ってるんです。それが何なのかをちゃんと言語化や可視化をし、自分たちがそれを認識して意図的に使うことができると、もっと中の繋がりも深まっていくだろうし、パフォーマンスに対しての良い影響も出てくるんじゃないかと思うんですよね。 会社の価値観とそこに集っている個人の価値観が一つの軸に沿っていて、「みんながちゃんと繋がっている」、「共感して共有できている」という感覚がすごく重要だし、それがどこなのかをちゃんと見つけにいって、当たりをつけられたらそれを育てていく、ということが「内輪感を増幅させる」ということなのではないかと思っています。 会社独特の言葉遣いとかってあったりするじゃないですか、社内用語みたいものが。その社内用語というのは、社外に対しては使えないからあまり出さない方がいいと言われることがあるんですが、社内で話している時はやっぱり社内用語出してる方が「なんか楽しい」とか、「おもしろい」とか、「この言葉が通じるってことはどこどこ出身ですよね?」みたいに、「仲間だな」ということが実感できるきっかけになりますよね。そういうことを意図的に生み出すための施策を考えたり、そういう実感が得られるコミュニケーションを目指していくことが、エンゲージメントを高めることに繋がってるんだと思っています。 「既にあるもの」の中に、意外といいところがあったりするはずだと思っているんです。何か違う人格を纏おうとすると結局は窮屈になるし、別にそれがよくて仲間になったわけじゃないって言う人たちも出てきちゃったりするじゃないですか。もちろん理想の姿を定義すること自体は必要なことだとは思うんですけど、そこと今の自分たちを適切に橋渡ししてあげないと、全部棄ててそこにいくっていうのは、あんまり意味がないというかもったいないと思うんですよね。今もっている大事なことと、そこから理想に近づくためにどうやって進もうかっていうのをみんなで議論したりすることはすごく重要だし、その中から取り組むべきことのヒントが得られるということなんじゃないかと。イベントをやる時のように、自分たちで盛り上がればそれでOKなんだよ、という状況においては思いっきり内輪な感じに持って行った方がみんなが楽しめるし、改めて自分たちの良さを感じられるということが起きるんじゃないかなと思っています。


―植松さんご自身のことについてお伺いしたいのですが。

子供のころにどんな遊びに夢中になっていましたか?幼少期のころにどんな遊びに夢中になったかを紐解いていくと、自分の強みや軸となるものが見えてくるということを「アソビジョンクエスト」という論文で目にしました。植松さんも、子供時代にされていたことで今に繋がっているものがあるのかと思いまして。

そうですね、それについては結構変遷があるような気がします。小学生ぐらいの頃は周りと関わるのがそんなに得意ではなくて、ザ・人見知りみたいな感じだったんです。だから幼い頃は例えばディズニーの作品とか映像で好きなものがあると一人でそれをずっと観ていたり、自分一人で過ごすことの方が多かったかなと思います。 それからだんだん変わっていって、それがはっきりしたのが高校時代に部活動でダンスを始めてからですね。パフォーマンスをするとか、何かを伝えるっていうことを考えたり演出することがすごくおもしろく感じて、そこからはひたすらずっとダンスをやってましたね。昔一人なことが多かったから余計になのかはわからないですが、表現することだったり人に何か伝わってその人が喜ぶとか感動する瞬間を作ることとか、そっちにおもしろいと思うポイントが変わっていったのかなと思います。 いろいろやってみたいとは結構思っていたので、友だちとカードゲームやったりもしたし、習い事もスポーツもやるし幅がめちゃくちゃ広かったんですが、それだけはっていうのがはっきり生まれたのはダンスが初めてだったんです。ダンスって、ダンスっていうカテゴリーの中でいろいろできるんですよ。ジャンルもいろいろあるからかっこいい系もできるしコミカルなのもできるし、毎回いろんなことができる幅があるのがよかったのかもしれないですね。


―その頃からリーダー的な存在だった?


振付を作る人をやったり舞台の総合演出のように、自分がメインでやるということは結構ありましたね。僕は誰かのサポートをする役もイヤじゃないし協調性もあるタイプだと思うんですが、本当に自分がわくわくしたりおもしろいなって思うのは、自分のアタマで生まれたものを作ってるときだったり、自分の発想で何かやってる時なんじゃないかなというのはダンスをやってる時に結構感じてましたね。


型にはめない「オリジナル」にこだわる 

結婚式も、最初に結婚式の事業をやりたいと思ってスタートしたわけじゃないんですけど、オーダーメイドで創るということが結構おもしろいなと思っていたというのもありますし、何かひとつ形を決めてパッケージ化しようって考えるよりは、一組一組とか一件一件に向き合ってそれをいかに演出するか考えたり、ケースバイケースでオリジナルで創るということの方がやっぱりおもしろいと思うし、僕はそういうタイプなんだと思います。


―いろいろな取り組みをしたいけれど、すぐに成果が出るのかといった短期的なことに目が向いてしまいなかなか踏み出せないという話もよく聞くのですが。


ビジネスの世界だと、なるべく一つの型をパッケージにしたり、誰でもオペレーションできる形で展開していく方が優秀であって、オーダーメイドのものというのは手間がかかるしスケーラビリティとか儲かるかどうかみたいな観点で見ると、なんかちょっと遠いところにいるんじゃないかという見方があると思っています。オーダーメイドのものをやり続けたいと思っているのは、僕個人がそうじゃないとおもしろくなくなるような気がするし、そっちの気持ちの方が勝っているからなんですよね。 価値観や会社が大事にしてることと、個人が大事にしてることがちゃんと接続されているか確認するというのがすごく重要だと思っています。それがよりできるように促してあげるということが、その環境で働くうえではすごく大事なことだし、それがあるかないかでだいぶ感じ方が違ってくると思うので、そういうところに目を向けた方が長期的に見ても絶対にいいと思います。だから、短期的成果だけが全てではないと個人的には思っています。


あらゆる人の「CHO」になることで幸せの循環を生み出していく

―最近「幸せだなあ」と感じたことは何ですか?


最近娘が生まれたことですね。すごいんですよ、破壊力が(笑)。最初に泣いた時は自分の子供だって信じられないような感じでしたが、だんだんいろんなことを考えるんですよね。そもそも新しい命が生まれてくることが奇跡だと思いますし、自分が奥さんと出会って、そういったいろいろなことがなければこの子はいないんだなっていう運命的なものも感じますし、ただ存在してるだけでかわいいし幸せっていう感情もあるし。人生に関することとか家族についてのいろいろなことを考えるきっかけをくれる存在でもあり、その体験が総合的に見たときにすごく幸せなことだなと感じてますね。

―お子さんが生まれたことで考え方は変わった?

今僕らがやっている事業だとか、Well-beingな会社を増やそうとしていることもそうですが、それがこの子が大人になった未来の社会に対して何かをしていることなんだ、と思うことが増えたかもしれないですね。娘が大きくなっていざ働く時に、僕らが関わったことによって幸せに働く人が増えている世の中になっていたら、より娘がHappyになれる確率が上がるなと思うと、今やっていることは未来を生きる人のために何かをしていることなんだな、とすごく感じるようになりましたね。


―人生をかけて成し遂げたいことは何ですか?


今やっていることをもっと深めたり突き詰めていくということは、自分の人生を通じてやっていきたいと思っていますね。今後で言うと、社外CHO事業でいろいろな企業に「幸せに働いている人」を増やしていこうっていうのはもっともっと広めていきたいです。

それからウェディングの事業も、結婚式という場をどうこうするというのではなくて、「幸せな家族を増やしていく」という、そういうことにも取り組めたらいいと思ってるんです。やっぱり夫婦が幸せであるとそこに生まれる子どもも幸せになれる確率が高くて、家庭が幸せであればその子供が成長する過程でそれが感じられる機会が増えるし、幸せな人になれる確率も上がるんじゃないかなと思うと、夫婦が幸せになるというのがすごく重要だなと思うようになりました。結婚式はその役割を一つ担ってると思うんですけど、結婚式の前と後も含めて、家族をより幸せにするためにアプローチしていくことができたらすごくいいなと思っているんです。 僕らは幸せに生きられる人を増やす、ということにもっと多面的にアプローチしていきたい。そしてそれを理論で伝えるんじゃなくて、どうしたらそれができるかっていうHowの部分をちゃんとサポートするっていう存在になりたいですね。 起業家はよく「世界を変えるぞ!」みたいなことを言うじゃないですか。でも僕は世界を変えたいとか、この負を解決したいという何か特定の事象に強いモチベーションを持っているタイプではないと思っていて。負があるからそれを変えて世界をよい場所にしたいというよりは、「どんな世界でもそこで生きている人たちが幸せになれるとか、幸せを感じられるようになるためにはどうしたらいいのか」ということに対してサポートができる存在でありたいと思っています。 「幸せ」って人それぞれで捉えるのがむずかしいものだと思うんですけど、「あなたにとってはこうなんじゃないですか」、「あなたたち夫婦にとってはこうなんじゃないですか」という輪郭をとらえて、何かを提供し形を創って行くサポートをすることもできる存在でいたい。「幸せのコーチ」ではないですけど、そんな感じのことが自分もできるようになればいいし、自分たちのチーム全員もそういう存在であれたらすごくいいなと思っています。 最近メンバーと議論した中で、スぺサンという会社のアイデンティティっていうのを言葉にしたんですね。それが「CHO of “You”」と言って、あらゆる人のChief Happiness Officerになるという意味なんですが、その「You」のところに入る人たちの幅を広げ、数を増やしていきたいと思います。自分たち自身のHappyも目指しますが、それを手に入れるためにというよりは、「誰かのCHOになれる自分であることが自分の幸せである」というサイクルがまわってるとHAPPYに生きていけそうな気がするのでそういう方向でいきたいですね。

幸せの4つの因子診断

🍀ありがとう

感謝を送り合う習慣。相手の何に感謝しているかを具体的に伝えてあげることで、うれしさややりがいも倍増。


🍀やってみよう

ウェディングという「ライフ」の幸せから始まり、「ワーク」の幸せにまで拡大していった過程はまさに「やってみよう」精神があったからこそ。


🍀なんとかなる

「価値観の共有」や「感謝を伝え合う」などにより仲間たちとの信頼関係を築いているからこそ、安心してチャレンジができるようになる。


🍀ありのまま

自分たち「らしさ」を大切に。内輪感を高めることが仲間の絆を強くする。


一時の盛り上がりで終わることなく、長く幸せな状態が持続できる仕組みづくりへの植松さんのこだわりにとても感銘を受けました。


お話ししていると、不足感から何かをするのではなく、「すでにある」ということを前提にされていると感じました。

足りないものを補うためにする行動は焦りや不安がベースになりがちですが、「すでにある」というところから考えると、ポジティブな気持ちで取り組むことができます。

「心理的安全性」の高い場で仕事ができる、その結果質の高いサービスを提供できるという良い循環が作られているのではないかと思いました。


植松さん、どうもありがとうございました!


<植松健佑>

2015年に株式会社スペサンを創業。以来、サプライズやオリジナルウェディングのプロデュース事業を通じて、“人を幸せにする心震える瞬間”をつくり続ける。現在は、法人向けに「社外CHO(Chief Happiness Officer)」事業を展開し、社員の幸福度を高め企業の成長を支援するためのコンサルティングを行っている。学生時代、ストリートダンスの舞台を通じて得た感動が起業の原体験。趣味はサウナとクラフトビール。



【株式会社スぺサン】

所在地:東京都文京区

設立:2015年4月10日

事業内容:サプライズプロデュース事業、オリジナルウェディング事業、各種イベント / パーティーなどの総合演出

https://sp-thanks.com/

サプライズプロデュース事業「Surprise Holic」https://surprise-holic.com/

社外CHO事業「Special Thanks」 https://sp-thanks.com/cho/

オリジナルウェディング事業「HAKU」 https://haku-cb.com/


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